2015年4月2日木曜日

「挺身隊」を知らなかった千田夏光氏

 以前に千田夏光氏の『従軍慰安婦』を読んだのはずいぶん前のことなので、今回読み直して色々と発見があったのだが、その一つに千田氏が「挺身隊という言葉のあること」を取材を通じて「初めて知りました」と述べていることがある(講談社文庫版、148ページ)。1924年生まれで敗戦時には成人しており、戦後は新聞記者として働き、写真集『日本の戦歴』の編集にも関わった千田氏が「挺身隊」という語の存在すら知らなかった、というのである。
 
 しかし考えてみれば、戦時動員をどういう名目で、どういう法的根拠で行うかといったことは動員する側の関心事ではあっても、動員される側にしてみればそうとは限らない。むしろ「動員されること」それ自体がまずは重大なのであって、その名目やら法的根拠は二の次、三の次だというのが普通だろう。

 右派は「挺身隊」と「慰安婦」の混同についてあれこれと邪推して見せるわけだが、動員された側に取材したジャーナリストが「(女子勤労)挺身隊」が正確にはなんであるのかについてさほど関心を持たなかったとしても、特に不思議はないのではないだろうか。